事業者向けセミナー
「発酵SALON‐新潟で発酵を語る/新潟を発酵で語る‐」#2
新潟県食品・流通課では、2020年2月18日、「発酵」を切り口に、今の食のトレンドや新潟の食の価値、新たな事業の可能性などを考える事業者向けセミナー「発酵SALON‐新潟で発酵を語る/新潟を発酵で語る‐」を新潟グランドホテル(新潟市)で開催しました。
今回のシリーズでは、このセミナーの様子を3回に分けて、少しだけご紹介します。
2回目は、「食のトレンドと地域の食文化の価値」について。
スピーカー:「料理通信」編集主幹 君島佐和子
「食のトレンドと地域の食文化の価値」
レストラン界では近年、発酵ブームが続いています。発信源は世界のレストランランキングで1位を4度取ったデンマークのレストラン「noma(ノーマ)」。彼らは北欧独自の価値観で食材を発掘するとともに発酵にも力を入れました。味に深みや奥行きを加えるのに役立つと気付いたからです。レストランに設置されている発酵ラボには、麹やみそ、しょうゆ、かんずりの他に、アヒルの羽毛を発酵させたものまであります。彼らは発酵を、そのままでは食べられないものを食べ物にしてくれる、食べ物を生み出す機能もあると考えているようです。
加熱によって味や食感を作るように、調理法として発酵を活用することが世界のレストランに広まっています。一方、日本各地では発酵をサブカルや地域資源として捉えたイベントが増えています。渋谷ヒカリエ「d47(ディヨンナナ)MUSEUM」で昨年開催された「Fermentation Tourism Nippon(ファーメンテーション・ツーリズム・ニッポン)~発酵から再発見する日本の旅~」の盛況ぶりはその象徴的な一例です。
※発酵デパートメント
今、全国各地で「発酵のまち」宣言があり、麹フェスティバルが広まっています。なぜ「発酵」が注目されているのか。今の発酵ブームにはサブカルやモードといった側面もありますが、時代背景を少し考えてみると、保存や味作り、ロス削減、ヘルシーなど発酵によってもたらされる効果は、添加物を使用せず、自然な営みとして得られるものでした。「あるものを生かす」ということです。素材も微生物も環境も、そこにあるものを生かすのが本来の発酵です。資材をよそから持ち込む必要がないことから、「発酵」がその土地の表現になります。このことが「発酵で地域活性」と結びつく。歴史的に発酵ライフが根付いてきた日本は、世界もうらやむ発酵ワールドなのです。
発酵は各地の地域性を表現するものであり、この再編集が進んでいます。
地域資源&ローカル表現として「発酵」を見てみましょう。今は拡散と共有の時代です。だからこそ価値を持つのは、そこでしか体験できないこと、手に入らないものと言って間違いありません。土地の歴史や文化、人の営みが詰まっている在来種や、風土と食材と菌と気候と人の掛け算の上に成立する発酵こそ、観光資源です。
里山十帖の岩佐十良(とおる)さんが提唱されている「ローカルガストロノミー」という言葉がありますが、私の解釈としては、地方で料理を作るからローカルガストロノミーなのではなく、在来種や発酵といった土地の資源が反映されてこそ、ローカルガストロノミーだと思っています。
私が「これぞ、ローカルガストロノミーだな」と感じる代表の一つが、発酵を取り入れた創造的な料理を作るオーベルジュ「とおの屋 要」(岩手県)です。料理人の佐々木要太郎さんは「発酵とは、土地の空気、土地の菌によって変化すること」と話します。先ほど申し上げたように、土地に密着してこそ、本来の発酵であるという考えです。nomaの発酵だけでは語れないものがあるかもしれないと思わされました。
もう一例が、里山十帖です。出される料理には、自家製の発酵食品や保存食が使われています。里山十帖の発酵室には、発酵中の木の芽やキノコ、花々、野菜などがぎっしり並んでいました。発酵はまさに地域の重要な観光資源であり、ローカルガストロノミーの一つの核を成します。
新潟は「清い」という言葉が合う土地です。雪と雪解け水によって空気や大地が洗い流されているからでしょう。清浄にして清澄な新潟の風土の中、新潟の人々の味覚はおのずとクリアさや繊細さを求め、磨き上げられてきたと思います。料理や食品づくりの根幹にあるのは人間の味覚です。だとすれば、新潟の発酵は洗練の発酵と言えます。新潟の発酵のキーワードが「雪が育む発酵食文化」とすると、新潟の味覚のキーワードは「水が磨く洗練の味覚」と言えるかもしれません。
最終回は、D&DEPARTMENT(ディアンドデパートメント)ディレクターの相馬(あいま)夕輝さんのお話を紹介します。
Kommentare