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越後みそとは Vol.4 「中越地域のみその特徴」


ゲスト:山﨑 亮太郎(山﨑醸造株式会社)

ナビゲーター:田中 竜男(株式会社レルヒ)



田中さん

よろしくお願いします。


山﨑醸造さん

お願いします。


田中さん

早速ですけど、山﨑醸造さんは中越地区(小千谷市)ですよね。

今、新潟県内のみその製造事業者としては1番規模が大きく、生産量が1番多いのでしょうか?


山﨑醸造さん

はい。


田中さん

そのような背景の中で中越地区のみそを語っていただく訳ですが、山﨑さん自身でお考えになっている主観で構わないので、中越のみそって新潟県全体の中でこんな感じだよねっていう、例えば上越地区や下越地区と比べるとこんな差があるんじゃないかなと思われるところがあればぜひ教えてください。


山﨑醸造さん

簡単にいうと上越とはうち麹かうち麹じゃないかって言う判断ができると思っております。

一方で、下越や佐渡と比べますと、大きな特徴がって言う点ではそんなにないように感じています。

ただ、麹歩合が中越の場合は6割から7割くらいで、いわゆる赤みそが主流になっておりますので、これが上越とか下越になるともう少し白みその割合が高いような気はします。ただ私、家業に戻って20年くらい経ちますが、年々白みそが増えてきてはおりますけど、やはり主流は赤みそですし、消費者の好みもどちらかと言うとコクがあって少ししょっぱいと言うか塩味があるタイプを好まれる傾向ではあると思いますね。


田中さん

確かに今お話にあったように、上越地区は麹粒をしっかりコメの形のまま残すことにものすごく気を使うし、熟成期間としては決して長くないですが、その分若干麹多めだなと言う印象がありますよね。

私自身、新潟県内のみそ製造事業者さんを訪問しており、製品を拝見していると、下越地区も割と麹歩合多めだなと言う風に感じています。

私自身が中越地区の人間だから余計そう感じますが、山﨑さんがおっしゃおられた6割とか7割とか、それこそ山﨑醸造で主力商品の8割とかのみそもありますよね。

最近どんどん世の中の傾向として麹歩合が高まってきているような気はする中で、なんとなく山﨑さんおっしゃっていたように、中越地区のみそってそんなに麹歩合を高くすることを追いかけてないなと言う印象を私も思っています。


山﨑醸造さん

食文化が関係しているところは大きいと思います。小千谷では、今年も降雪2mくらいになったのですが、雪掘りなどで汗をかくので、みそ汁やみそ漬けで塩分や栄養源を確保するのが昔からの流れだと思います。保存性の観点から、少し塩分が高いものが好まれる傾向が今も続いているのかなと。


田中さん

麹歩合が低めだと、今のご時世だとなんだか好まれないと言ったら言いすぎかもしれませんが、麹歩合が高いものが好まれるような傾向があるような気がします。もしかしたら、麹歩合が高ければ高いほど上品質みたいな印象を持っているかもしれないですね。一方で、今の話を聞いていて思ったのが、中越地区のみそは大豆由来のうま味とかを重視しているのかな?と少し想像しました。以前、私の母親と漬物に関する話をしているときに、昔はみそ漬けではなくとも、色々ものに味をつけるときにみそを使っていたそうです。現代では当たり前に“だし”は入手可能ですが、当時だしは高級品で、気軽に使えたものではなく、結局うま味が欲しいときに何を使っていたかと言うと、みそを使っていたのではないか、と言うことを私の母親が言っていました。そのようなことを考えながら今の話を聞いていたら、より合点がいきました。山﨑さんのお話にもありましたけど中越は豪雪地ですし、基本的には海がない地(今は中越も海はありますが)、例えば山﨑さんのところの小千谷や魚沼地区も完全に海がない地域で、山の方ですからね。そう言ったところでおいしいものって言うとやっぱりみそとかになるのかなって考えました。


山﨑醸造さん

あとは保存性の問題も出てくると思います。中越の雪だいたい11、12月に降って、翌年3月くらいまで雪に覆われた世界になります。そう言った点では日持ちをさせるために少し塩分が高くなります。

手前どもも昭和30年から40年、いわゆる街の小売店さんが元気な時代っていうのは越冬用というような冬を越すための調味料としてみそ・醤油を配達もさせていただいておりました。だいたい11月とぐらいにトラックいっぱいに運んで、その家の倉庫とか蔵のほうに満杯にお運びして、冬場は集金に行く程度で、雪が降ってもちろんそりでも運んだりもしてたらしいんですけど、やっぱ効率が良くないのでそう言った形でやっておりましたので、やっぱり雪とは密接な関係なのかなぁと思っております。


田中さん

話題は変わりますが、中越地区のみそとしてじゃなくて、一事業者として山﨑醸造が作っているみそについて、どのようなことを考えながら作られているのか、特徴あるいはどういう用途、どういう味わいを狙って作っているのか、その辺の山﨑醸造としてのみその特徴だとか、取り組みをぜひ教えてください。


山﨑醸造さん

弊社で一番大切にしているのはやはり品質です。品質って会社によって考え方が異なっており、もちろん安心安全は当たり前だと思いますが、そう言った点では「安定」になると思います。色々な会社があり、天然醸造されているところもあると思いますが、天然醸造で一定の品質をずっと維持できるのかってかなり難しいことなんです。そう言った点で大豆も米も年次間差がありますし、産地によっても違ってきます。そう言ったところで微調整をしながらまた熟成度合いを見ながら一定の品質でお客様に届けるというのが会社の使命だと思っております。それと同時に今回値上げの方も発表させていただきましたが、適正な価格といいますか、ただ極端に弊社もマーケットを取るための安い価格というのは考えておりませんし、適正利潤って言いますか、お客様にも「これくらいの品質でこれくらいの値段ならなら手頃感があっていいよね」って言ってもらえるような価格帯でやっていきたいと思っております。もちろんスーパーさんで特売商品とかですと全国の大手メーカーさんに比べたら新潟のみそは100円から200円高く実売ってなっているかもしれないですけど、実際に使う量で考えますと、1日あたり数円の違いでしかない世界だと思うんですね。もちろん大手製品にはだし入りという手軽さというのもあるのでしょうけど、逆にいうと色々なだしを使ってみそ汁、みその多様性みたいなものも楽しめるようなものが新潟県のみその良さだと思いますので、そう言った形で価格以外の付加価値を伝えられるかなと感じております。


田中さん

今、みそ汁の話に出ましたけれども、山﨑醸造さんは液体のみそ汁の素に結構一生懸命取り組んでいらっしゃいますよね。やはりあれは入り口を作りたいということなのでしょうか。


山﨑醸造さん

そうですね、今、残念ながら学校とかでみそ作り教室をやって簡単なアンケートというかをとりますと、1日1食みそ汁を飲まないご家庭も結構多くなってきております。もちろんこれは共働きや核家族化など、理由は色々あると思うのですが、そう言った中で、毎日できたら3食のうち、せめて1食くらいはみそ汁を飲んで欲しい。で、みそ汁1食作るのも家族分5食作るのも10食作るのも同じくらいの手間暇はかかると思います。そう言った点では(液体のみそ汁の素は)手軽に1食から作れますし、今、食堂やドライブインでもご提案させていただいております。しかしながら、やはり作っても捨ててしまうっていうことも場合によってはあり得るので、そう言った所では使い切りサイズなど急な変更もできるような形で対応できるようにしていきたいと思っております。


田中さん

そうおっしゃる山﨑さん自身毎日みそ汁は召し上がっていますか?


山﨑醸造さん

はい、なんらかの形で飲んでいます。


田中さん

今、品質というお話と、比較的手軽にみそ汁を飲んでもらえるよう液体で発売しておられるわけですけども、やはり業界、新潟県の作り手さんの中で1番規模が大きい訳で、その辺こう、市場だとか用途とか切り開いていかなければならないとかそう言った使命感は感じていられますか?


山﨑醸造さん

もちろん今回の値上げの件もそうですが、醤油の話とはいえ、トップブランドの全国のメーカーさんが声を上げていただき、比較的ニュースになったおかげで、世の中に理解いただけたのが現状だとは思います。

値上げの話をする際は、穀物の相場の話ですとか、エネルギー関連の話とかお話をさせていただくんですが、この短期間で色んな食品業界の値上げがあったと記憶しています。こういった値上げについて、共通して言えるのが主原料である事、エネルギー関連が絡んでいるということです。

事業継続するためにはどうしてもお願いしなければいけない場合があると思っています。やっぱり無理をして、途中で体力がなくなってダメになりましたというのが最終的には色んな方にご迷惑をかける形になると思っていますので、そう言った部分では生産量が1番多いという立場として、皆様を代表して1番最初に声を上げさしてもらいました。

その他商品に関しまして、今弊社で取り組んでいるのが、アレルギー関連のみそや醤油です。アレルゲンフリーとまでは言えないですが、大豆を使わないみそや大豆と小麦を使わない醤油などに取り組んでおり、ここにきて色んなところからお取引や問い合わせが増えております。今まで私どもにも見えていなかったマーケットだなと思っておりますし、会社として少しでも世間でお役に立てる事ができればと、そういったこともやっていこうと思って取り組んでおります。


田中さん

今、アレルギー対策関連のマーケットが存在するというお話がありましたが、そう言ったアレルギー対策に対するお話は、当然日本以上に欧米なんかっていうのは進んでいると思います。実際アメリカで見た事例ですが、小麦を使わないたまり醤油なんかは、調味料の売り場ではなくて、アレルギー対策食品の売り場に並んでいるのを見たことはありますが、アレルギー云々とは関係ない視点で、和食が世界文化遺産に登録されたとか、そう言った流れの中で海外からの越後みそに対する引き合いとか、山﨑醸造として海外にみそを輸出しているなどの事例はあるのでしょうか。


山﨑醸造さん

残念ながらみそでの事例はありません。醤油は一部得意先様が海外に工場を持っておりまして、東日本大震災前までは醤油の方は輸出しておりました。

(輸出していた醤油の)主な使い方としては米菓用の味付けのための醤油になります。普通の醤油じゃなくてちょっと特殊な醤油になっておりますので、そう言ったものを使われていました。

現在は、中国並びに東南アジアに関しては、食品に関してNGが結構あるので、それ以降は輸出ができていませんが、みその方はまだまだ越後みそというブランディングもそうですし、知られていない部分っていうのは結構あると思っています。色々海外で新潟県あたりから引き合いはもちろんいただくのですが、なかなか量と手続きの関係上でまだまだPRできてない部分があります。現在、新潟県味噌醬油工業協同組合青年部が中心になり、越後みそのブランディングがようやく始まりましたので、今後、

いずれは世界で使ってもらえればなぁと思っております。


田中さん

越後みそとブランディングというお話が出ましたが、越後みそは地域商標として認定されましたよね。その活動を組合でやってこられたし、山﨑さん自身組合の青年部のメンバーとして活躍されています。そんな中で今後越後みそとして、新潟の作り手として、越後みそは今後どうなっていくのか、あるいはこんなことをやっていきたいとか、そんな展望があったらぜひ教えてください。


山﨑醸造さん

新潟県は非常に潤沢かつ良質なお米が取れます。そう言った中で米菓やお酒などのカテゴリが先行して非常に全国だけでなく、世界的にも高く評価をいただいています。私どもの越後みそっていうのも技術の面では全国でもトップクラスの技術を誇っております。

ただ、先ほどのみそのブランディングと同様に、いいものなのに、いいものと堂々と言ってこなかった点もあると思いますので、そう言った部分をもう少し一般の消費者の方にも広げて行かなきゃならないと思っております。

また、品質の方も先ほどから出てるように上中下越美味しいみそはたくさんあると思っております。もちろんみその場合はこれと決めたらずっと使われることも多いかもしれませんが、料理によっても違うと思いますし、季節の野菜なりみそ汁の具によってもまた使うみそが違ってくるとも思っております。そう言った点で、色んな部分楽しんで頂ければと思いますし、新潟県も本当にほとんどのみそ屋さんが中小企業の方々、また個人のとーちゃんかーちゃんでご商売をやられているところもまだまだ多いですので、そういった所を何とかまだまだコロナで大変だとは思いますが、次の世代にバトンタッチできればと思っております。何事もそうだと思うんですけど、一度途絶えたものや失ったものっていうのはなかなか復活って難しい所ありますので、形はどうあれ、色んなところでそう言ったみそ屋さんが頑張ってもらって、一般の消費者の方にまた楽しんでいただければと、そう思っております。


田中さん

わかりましたありがとうございます。大変貴重な話が聞けました。


山﨑醸造さん

ありがとうございます。


田中さん

ありがとうございます。


〔お問い合わせ〕

今回の取材は、新潟県雪国の発酵食文化発信事業の一環で取り組みました。

新潟県農林水産部食品・流通課 025-280-5963


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