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「越後のみその生業について」 ♯7.これからの発酵食品業界への期待/今井誠一さんインタビュー


——醸造技術のさらなる発展で、具体的に期待することは?


大豆蒸煮装置、米の蒸し装置、製麹装置、混合攪拌装置、発酵・熟成室など、ハード面の開発は、行き着くところまで来ています。ソフト面の開発も進んでいますが、残されているのは、機能性食品としての開発などの分野ではないでしょうか。以下はほんの一例です。


こうじ菌:アミノペプチターゼ酵素はアミノ酸やペプチドを生成し、血圧を下げるという観点からの研究が今後進むのではないか。また乳がんや前立せんがんを予防する効果が期待できるアグリコン型のイソフラボンを増強させる技術の確立など。

酵母:現在の実用酵母よりもさらに香りが芳醇で、かつ現場で使いやすい酵母を分離または育種できないか。ワイン酵母やビール酵母などで低塩みそを造り、それを魚介類などの核に利用できないか。

乳酸菌:現在の実用株が最高だとは思えない。みその着色を抑制する株、酵母と共生する株の分離など




——みそ自体の商品開発で考えられることは?


新商品はいろいろ考えられますが、みそ自体の商品開発は限られています。大豆を変える、原料米による差別化、生タイプのアピールなどです。

米の代わりにそばや五穀を使ったみその商品化も一案で、昔、昨今話題のもち大麦を使った麹作りに挑戦したことがありましたが、浸漬時間の管理や蒸した後の取り扱いなどかなり苦労しました。

現役のメーカーの方たちには、講習会などで聞いたことを果敢に試作してほしい。県内の大手米菓メーカーの当時の工場長は「試作なくては消費者に受ける商品は作れない」とおっしゃっていました。



——みそ関連商品の開発で考えられることは?


醸造なめみそ、加工なめみそ・調理みそ、ジャン系統の調味料、たれ類、液状即席漬けの素など。特にジャン系統については、ユーザー側との連携で、新展開が可能ではないでしょうか。



——昭和初期の自家醸造食品で現在の消費者に受け入れられそうなものはありますか?


みそ玉みそですね。酸味と渋み、懐かしいにおいが受けるのではないでしょうか。昔は酵母発酵をあまりさせていなかったようですが、あえてさせてみてもいいのでは。



——〈田中〉みそ玉、テンション上がりますね。やるとしたら、うち(ぽんしゅ館)くらいじゃないですかね(笑)


商売をおやめになったメーカーさんでは、みそ玉を桜の木で燻煙していましたが、燻蒸はしないほうがよいかと思っています。



——麹ブームについてはどう感じていますか?


甘酒も塩麹も昔からありましたから、あまり感慨はないですね。PRの仕方次第だということは感じています。開発が早すぎても遅すぎてもだめ。タイミングとどうやってPRするかが大事だということですね。





(プロフィール)

今井誠一(いまい・せいいち)

農学博士。1937年に燕市吉田(旧西蒲原郡吉田町)で生まれる。新潟大学農学部卒業後、新潟県食品研究所に入所。みそやしょうゆなどの大豆発酵食品の研究及び技術指導に従事。93年には、科学技術庁長官賞を受賞。90年から95年まで所長を務め、同年退職。全国味噌鑑評会審査員を31回務める。新潟県味噌工業協同組合連合会顧問、全国味噌技術会常任理事を歴任。著書は『食品加工シリーズ 味噌-色・味にブレを出さない技術と販売』(農山漁村文化協会)、『みその絵本』(同)。

〔聞き手・文〕

高橋真理子:群馬県出身。大学卒業後、絵本、生活情報誌『レタスクラブ』編集部を経て、結婚を機に新潟へ移住。フリーの編集・ライターとして『るるぶ』『新潟発』に関わり、新潟の食と酒の魅力を伝える出版社・株式会社ニールを設立。『cushu手帖』、『新潟発R』を発行。著書は『ケンカ酒 新潟の酒造り 小さな蔵の挑戦』。現在も四季折々の新潟の美味に感激し、堪能する日々を送る。

〔お問い合わせ〕

今回の取材は、新潟県雪国の発酵食文化発信事業の一環で取り組みました。

新潟県農林水産部食品・流通課 025-280-5963